実施事業

「2021ぐんまの家」設計・建設コンクール

「ぐんまの家」設計・建設コンクールは、ご家族が満足する良質で住み良い県内の住宅を表彰することにより、県民皆様の住宅に対する関心をより一層高め、ゆとりある豊かな住生活の推進を図ることを目的に、群馬県及び群馬県ゆとりある住生活推進協議会の主催、住宅金融支援機構の共催により昭和 62 年から実施し、今年で 34 回目になりました。
 今回は、新築住宅部門に 35 点、リフォーム住宅部門に4点、計 39 点の作品の応募をいただきました。いずれの住宅も、ご家族、設計者、施工者が一体となって作り上げられ、住まわれる方のライフスタイルにあわせた提案を感じられる素敵な作品でした。本コンクールでは、これらに対し公平厳正な審査を行い、11 点の表彰作品を選定いたしました。

 住宅は、人生の大半を過ごす場所として欠くことのできないものです。折しも新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちに生活拠点としての住宅の重要性を再認識させるとともに、二地域居住やテレワークなど「新たな日常」に向けた新しい住まい方のきっかけともなりました。また、近年は、人口減少、少子高齢化といった社会的構造の変化への対応や地球温暖化による気候変動対策として、住宅にもバリアフリー、省エネルギー、環境共生を満たす性能が求められるようになってきました。
 このような社会や環境からの要請と、これから暮らすご家族の「夢」とを両立させる住宅をつくるためには、つくり手である設計者や施工者は日々見聞を広め、知識の習得や技術力の向上に努めるとともに、一軒ごとに異なるご家族の想いに寄り添いながら共につくりあげる姿勢を持って家づくりに携わることがとても大切です。
 本作品集では、様々な工夫や先進的な取組を行った数々の素晴らしい住宅を多数ご紹介しています。県民の皆様には「ポストコロナ」時代を見据えた豊かな住まいづくり、まちづくり、ゆとりある住生活をづくりの参考にしていただければ幸いです。
 最後に、コンクールに応募いただいた皆様、厳正な審査をしていただいた審査員の皆様、ご協力いただいた関係団体の皆様に厚く御礼申し上げます。

令和3年 10 月吉日
群馬県県土整備部住宅政策課 課長 井上  修
群馬県ゆとりある住生活推進協議会 会長 石井 繁紀

受賞作品一覧

住宅名称設計者施工者
最優秀賞HP-59 本動堂の家WOOD’S 環境計画工房田村建設株式会社
住宅金融支援機構賞二層のスキップフロアのある平屋の家株式会社関工務所株式会社関工務所
審査員特別賞終の棲家株式会社城越設計株式会社城越設計
優秀賞土間のある平屋の家株式会社米田横堀建築研究所株式会社津久井工務店
優良賞前橋の平屋TDL アーキテクツ一級建築士事務所上柿建設株式会社
優良賞上並榎サニーサイドKAAD 設計舎有限会社清水総建
優良賞田・風・舎工作舎株式会社津久井工務店
優良賞ぞうのいえ小島光晴建築設計事務所竹並建設株式会社
優良賞はすかいのいえAtelier N株式会社関工務所
優良賞トルサード有限会社HIRO 建築工房阿部工務店
優良賞ケーブルカー生物建築舎建築舎四季株式会社

審査委員長総評

 「2021ぐんまの家」の審査を終え、回を重ねる毎に作品の質とレベルが高くなる様を感じました。
 社会構造の変化に伴い多様化する住環境に関する課題解決や、県産木材の積極活用による持続的な地域づくりの取り組みなどは、「ぐんまの家」に求められる基本的な要素であると考えます。

 今年は「新たな日常」としてテレワークや二地域住居等の対応や「環境への配慮」として維持管理の容易性、長寿命化への工夫等も新たに審査対象といたしました。
 一次審査では拮抗する作品の質の高さから選考に悩み、二次審査では選考委員の意見の分かれる場面もありましたが、今年の「ぐんまの家」の「顔」を決めるべく、慎重にかつ十分な議論を重ね、各賞を決定しました。
また、今年は新型コロナウイルスによる感染拡大防止の緊急事態宣言下であったため現地審査が叶わずビデオ撮影による最終審査となったことを付け加えておきます。
 最優秀賞に輝いた「本動堂の家」は建築主の職業と住まい方を良く理解し、エントランス廻りの多様な可能性を秘めた建築計画が大変魅力的であります。2つのコートを設けたプランはゾーニングが明確であり機能的でありながらプライベートな空間を切り分け、自然の採光と通風を十分確保することのできる間取りとして高い評価を得ました。また工事費も適正であり周囲の環境にも緩やかに融和する秀作であると言えます。
 審査員特別賞の「終の棲家」は大胆な減築と不使用スペースの削除により、原型を見失う程の高い完成度を誇るリノベーション住宅です。住み続けることで得られる幸福感と、地域への愛着を感じる取り組みは社会問題化する空き家対策にも一石を投じる作品であると言えます。
リフォームの域を超えた建築計画は建築主と設計者、施工者の高い信頼関係を伺わせます。
 受賞した作品はどれも素晴らしく「家」としての新しい魅力を引き出しながら細部の工夫も見てとれるものでした。
 これからも、群馬の気候風土や地域性、県民性などを考慮しながら環境に配慮した住宅が多く生まれることを大いに期待します。
 最後に応募された全ての方に敬意を表すると共に、苦しみながらも楽しく審査をさせて頂きましたことに審査員一同、感謝と共に御礼申し上げます。

「2021ぐんまの家」設計・建設コンクール 審査委員長
一般財団法人 群馬県建築士事務所協会  萩原 憲一

受賞作品紹介

HP-59 本動堂の家
【えいちぴーごじゅうく もとゆるぎどうのいえ】

設計者/ WOODʼS環境計画工房  施工者/田村建設株式会社

講評

 大変恵まれた敷地を活かし、内外の繋がりと共に全居室に快適な通風と採光を確保しつつ周辺からのプライバシーを保ち、また旧来の農家住宅のイメージを払拭したデザインが高く評価されました。
 南北で明快に分けられたパブリック・ワーキング空間とプライベート空間、2つをコンパクトなDKで繋いでいる点も潔く、南面を通しで設けられた内土間と軒下・半屋外となる外土間は、利用状況の具体的な想像が容易で近年多作の土間を持つ住まいとは一線を画しています。

 専業農家の住宅兼作業場という枠にとどまらず、コロナ禍でのニューノーマルという視点からも多様な可能性を秘めたものとも思え、また、農家仕事をスマートにこなす若い住まい手とおおらかな周辺環境に建つ佇まいが相まって好印象を与えました。
 平面計画が単純、軒が高い南面の木製外部建具のメンテナンスが気掛かりとの意見も聞かれましたが、セオリー通りの分かりやすくシンプルな想いを形にしている点が多くの賛同を得た作品でした。

住宅金融支援機構賞
二層のスキップフロアのある平屋の家【にそうのすきっぷふろあのあるひらやのいえ】

設計者/株式会社 関工務所  施工者/株式会社 関工務所

講評

 私ども住宅金融支援機構は、前身の住宅金融公庫の時代から、国民のみなさまの「住生活の向上」を使命として事業を行っております。
 住宅に対するニーズは、時代の流れとともに変化するものですが、近年は、地球温暖化等の環境問題、頻発する大規模災害、少子高齢化等の様々な問題への対応も求められていると存じます。
 今回、住宅金融支援機構賞の審査をさせていただくにあたっては、本コンクールの審査基準を踏まえた上ではありますが、各作品の省エネルギー性、耐久性・可変性、子育てのしやすさ等の観点について、特に注目させていただきました。
 各作品は、いずれも優れたものですが、今回、住宅金融支援機構賞を授与させていただきます「二層のスキップフロアのある平屋の家」は、群馬県ならではの広い敷地を活かした「平屋」で、「深い庇」と「土間」を設けておられます。
 この深い庇により「日差しが家に差し込むのを遮る」、これによって、夏でも家の中を通る風が涼しく感じられる工夫は、エアコンに頼らずとも快適な空間を実現し、群馬という地域性に合った仕様と存じます。
 また、室内の快適な空間にあわせ、長い庇下のウッドデッキをリビングの延長とすることにより、家族が楽しめる空間となるような工夫もなされています。
 そして、「この家に住み続けたい」という思いに応えられるよう、建物自体も十分な耐久性を備えておられます。特に、長期優良住宅の認定を取得されていることなどから、施主様、設計施工を担った事業者様の住まいの性能への意識の高さを感じました。
 さらに、部屋に入る前でなく、玄関で外套上着が脱げる工夫や、仕事をしながら家族の気配を感じられるスキップフロアの書斎を設けるなど、現在のコロナ禍におけるテレワークなどにも対応しています。
 以上の点を高く評価し、「二層のスキップフロアのある平屋の家」に、住宅金融機構賞を授与させていただきます。

審査員特別賞
終の棲家【ついのすみか】

設計者/株式会社 城越設計  施工者/株式会社 城越設計

講評

 閑静な街区に佇む住宅の持ち主は、お一人で生活される70代のご婦人。
 住み続けた住居をこれからの時代と暮らし方の変化に順応させるべく大胆なリノベーションにより多くの問題点を解決しました。また、住みながらの大規模な工事は工区分けをし、生活に必要な水廻りを機能移転させながら維持させることで、実に1年半にも及ぶ工事となりました。
 建築主の依頼と要望を様々な制約の下で具現化した設計と施工は、大変なエネルギーの伴う作業であったと伺えます。それは建築主との高い信頼関係により実現することとなりました。
 活かすために捨てるデザインを徹底し、自然素材を多用した豊かな内部空間は家主の五感に響くプロポーションとなり、大胆な減築により生まれ変わった外観は正対する桜並木と呼応し、あたかも従前からその場に在ったかのような佇まいを見せてくれます。
 暮らし方、住まい方の優良事例として。また、既存住宅の長寿命化やロングライフ化の成功例として、優れた取り組みに対し審査員特別賞を授与いたします。

優秀賞
土間のある平屋の家【どまのあるひらやのいえ】

設計者/株式会社 米田横堀建築研究所  施工者/株式会社 津久井工務店

講評

コンパクトながらそつなく纏まったプランとつくり手の丁寧な技量を感じる作品。導入部から玄関へと続く軒下空間がシームレスに繋がることで空間の広がりと奥行きを創出しており、交流の場として優れた雰囲気を醸しています。特に玄関を兼ねた土間空間は設えられた仕掛けとともに多様な利用を想起させ、家族相互はもちろんのこと、社会とのコミュニティースペースとして活用できる時を待ちたいと感じました。

周辺との調和を感じる外観は、深い軒がファサードの表情を豊かにしていると同時に日照調整に寄与しており、また内外ともに木を効果的に用い、落ち着いた温もりを感じる住宅となっています。また、子供室の孤立感やコストなどに対する意見もありましたが、住まい手の身体状態に配慮した動線や、セルフメンテナンスによる愛着の誘因など、総合的に評価が高かった作品でした。

優秀賞
前橋の平屋【まえばしのひらや】

設計者/ TDLアーキテクツ一級建築士事務所  施工者/上柿建設株式会社

講評

 変化のある屋根の連なりと、左官壁・木壁のコントラストがバランス良く整っていて佇まいが優しく美しい住宅です。恵まれた敷地を最大限生かすことに成功した平屋であり、バリアフリー性や将来の住み方の変化にも対応可能なように思われ、西側道路からグラデーションの如くパブリック→プライベートと空間深度が変わってゆく様は小気味良さを感じます。また、間取りと内装仕上の既視感や動線の長さ、軒樋が少なく木板張り外壁の経年劣化を心配する声も聞かれましたが、開放的でありながら夏冬を問わない熱負荷に対する工夫がなされ、更に日当たり良好な堅実さは、現実の生活感を大切にしたプランニングとコスト面でも評価に値する作品でした。

優良賞
上並榎サニーサイド【かみなみえさにーさいど】

設計者/ KAAD設計舎  施工者/有限会社 清水総建

優良賞
田・風・舎【でん・ふう・しゃ】

設計者/工作舎  施工者/株式会社 津久井工務店

優良賞
ぞうのいえ

設計者/小島光晴建築設計事務所  施工者/竹並建設株式会社

優良賞
はすかいのいえ

設計者/ Atelier N  施工者/株式会社 関工務所

優良賞
トルサード

設計者/有限会社 HIRO建築工房 施工者/阿部工務店

優良賞
ケーブルカー

設計者/生物建築舎  施工者/建築舎四季株式会社